国内ファーマコビジランスの管理:現地関連会社の観点

Patient Safety - Pharmacovigilance

ファーマコビジランス(PV)活動に関する要件を厳格化し監査を強化する国が増加するなかで、現地関連会社のニーズが高まっています。これに伴い、現地PV要件に対応するためのベストプラクティスや重要な習得事項の必要性も増大しています。当社では、世界の多くの市場での実績を活かし、このようなベストプラクティスが持つ意味を、PVの担当者、プラットフォーム、そしてプロセスの観点から探究します。

現地レベルの担当者に注目

PV活動では継続的な監視が必要です。これは、現地PV担当者の休暇中の業務代行や配置転換を確実に行うためのバックアップが必要であることを意味します。欧州医薬品庁[1]などの保健当局が明確に求めるそのような1日24時間、週7日の監視を遂行するには、担当候補者のオンボーディングを迅速かつ簡潔に行う必要があります。業務内容の明確な説明による引継ぎ計画や、継続性を実現するための定期的なトレーニングが不可欠です。

例えば、100カ国で事業を展開する大企業の場合、各国でのPV活動の維持、つまり現地PV担当者に週1回トレーニングやオンボーディングを実行するには、少なくとも200人は必要となります。

このような現地PV担当者には、文献検索の実施から個別症例安全性報告の特定に至るまで、豊富なPV活動経験も必要とされます。また、リスク最小化策[2]や患者支援プログラム[3]、医療機器や化粧品など他のタイプの製品に関するシグナル検出といった問題にうまく対処できることが求められます。このため、企業はこの監視業務を若手従業員に任せることはできません。現地PV活動担当者は、現地規制当局との国内連絡窓口となり、規制当局の査察に備え、対応できるようにする必要があるためです。

しかし、このような役割を担う適切な候補者を見出すうえで課題となるのが、高度なスキルを持つPV担当者の不足です。このため、多くの企業はリソースを持つパートナーへの外部委託に転じ、現地やグローバルでのニーズに応じて規模を拡大しています。経験豊富な現地人材を活用してより複雑なPV活動に対処し、現地の言語で現地当局に対応する一方で、文献検索などの特定の活動については一元化して効率を高めているのです。企業によっては現地PV活動を全面的に外部委託している場合もありますが、一部の国ではいくつかの業務を外部委託するハイブリッド型の業務委託のほうが合理的な場合もあります。

現地のプラットフォームおよびプロセスの管理

大半の製薬企業は今後、世界規模のPVシステムを整備していきますが、現地の標準作業手順書(SOP)や作業指示書、あるいは現地ガイダンスなど、いくつかの現地コンポーネントは常に存在します。当社の経験上、このような現地手順書は多くの場合、企業の品質管理システム(QMS)に組み込まれていません。現地手順書が、適切で有効かつ適合性があることを確認する、あるいは世界規模のプロセスと調和する可能性があるか評価することが重要です。

いずれの場合にも必要となるのがトレーニングマトリックスで、通常、トレーニングの計画、追跡、および管理に使用されるものですが、これには社内外のPV担当者を対象とした現地PV有資格者(LQPPV)トレーニングのカリキュラムも含まれます。

この社内外のPV担当者を対象としている点が肝要です。企業が現地PV活動を社外委託するか社内で対応するかは問題ではなく、誰でもトレーニングを利用できるようにしなくてはなりません。外部委託先担当者を企業の戦力として組み入れ、同じトレーニングやサポートを提供することにより、現地PV活動を孤立させないようにします。

現地レベルでの課題のひとつは、現地PV活動の管理にさまざまなExcelのタスクトラッカーが使用されていることです。各関連会社に4つの異なる現地PVワークストリームがあり、それぞれの活動につき1つのトラッカーがあったとします。企業が100カ国で事業を展開している場合、400ものトラッカーがあり、そのすべてが各国のフォルダに保管されることになります。これは持続可能でも効率的でもありません。

ですから、企業は現地PVシステム全体を管理する単一の有効なデジタルプラットフォームを構築し、データの追跡や管理を容易にすることを検討すべきです。単一プラットフォームを構築することで、各国の症例数に関するPV統合報告書の作成など、特定の活動の自動化を進めることもできます。これにより、EUのPV有資格者(QPPV)はEU市場全体で何が起きているかを把握することができます。QPPVは医薬品市販承認取得者のPVシステムを確立し維持する責務を負っているため、これは重要です[4]

現地の懸念や予測に対処

企業が現地PVサービスの外部委託を選択する際には、時間をかけて現地関連会社にその意向を伝えることが重要です。多くの場合、関連会社は良好な業務関係を構築した現地コンサルタントを利用しています。関連会社が話し合いに参加し、特定のサービス提供者を利用する理由を理解できるような、チェンジマネジメントプログラムが必要です。

サービス提供者も同様に、どのような役割や活動を担うのか、またどのような活動が社内で、あるいは他のベンダーにより実施されるのかを把握する必要があります。これを明確にしなければ、新たな外部委託先は現地PVサービスを効率的に実施することができません。このため、本社は関連会社に対し、特定の活動の委任または外部委託の必要性を納得させ、同意を得る責任があります。

現地関連会社の準備

業界内では、外部委託したPV活動を各国で異なるベンダーよりも単一のサービス提供者のもとで統合することを求める動きが高まっています。これによってプロセスが合理化され効率が高まる可能性はありますが、企業が時間をかけて現地関連会社の準備を行い、適切なトレーニングを確立し、現地レベルで賛同を得て、外部リソースが組織に完全に組み込まれるようにするプロセスを採用することが重要です。

 

著者について:

Alex Brenchat(Ph.D.)は、弊社バイスプレジデントであり、現地関連会社ファーマコビジランスサービス(LPVS)部門のプラクティス・エリアリードです。前臨床および臨床研究、科学論文の発表、革新的医薬品のポスターや特許の支援など、製薬業界で20余年の実績があります。

 

 

[1]国レベルのファーマコビジランス(PhV)窓口担当者の指名に関する加盟国の要件についての情報 – ヒト用医薬品に関する要件. EMA. https://www.ema.europa.eu/en/documents/other/information-member-states-requirement-nomination-pharmacovigilance-phv-contact-person-national-level_en.pdf

[2]医薬品、医薬部外品、化粧品及び医療機器の製造販売後安全管理の基準(GVP)に関するガイドライン モジュールXVI – リスク最小化策.欧州医薬品規制首脳会議(HMA)およびEMA. https://www.ema.europa.eu/en/documents/regulatory-procedural-guideline/guideline-good-pharmacovigilance-practices-gvp-module-xvi-risk-minimisation-measures-rev-3_en.pdf

[3]患者支援プログラム(PSP)および市場調査プログラム(MRP)による安全性データの管理. 2013年EMA発表. https://www.ema.europa.eu/en/documents/presentation/presentation-management-safety-data-patient-support-programmes-psps-and-market-research-programmes-mrps-gilles-touraille_en.pdf

[4]指令2001/83/EC第104条を改訂する指令2010/84/EU. 2010年12月. https://eur-lex.europa.eu/LexUriServ/LexUriServ.do?uri=OJ:L:2010:348:0074:0099:EN:PDF

 

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